高度人材ポイントの「研究費3%超」とは?5点加算の条件と計算方法を行政書士が解説

「高度人材ポイント計算表の『試験研究費等比率が3%超の中小企業における就労』という項目が、よくわからない」

高度専門職ビザの申請を考えている方や、採用担当者の方から、こうしたご質問をいただくことがあります。

この項目は、勤め先の会社の決算の数字で決まる加点です。外国人ご本人の学歴や年収とは関係がないため、見落とされやすいところでもあります。

この記事では、「研究費3%超」で5点が加算される条件と計算のしかた、申請のときに必要な資料と注意点を解説します。

※正確には在留資格「高度専門職1号」ですが、この記事では、一般的に伝わりやすい「高度専門職ビザ」という表記を使っています。

記事の監修者

東京セントラル行政書士事務所
行政書士 谷田

在留資格申請をメインに運営している行政書士事務所です。
事務所所在地は東京日本橋駅から徒歩2分のところにあります。
お問い合わせはこちらからお気軽にお送りください。

目次

「研究費3%超」で5点が加算される条件

高度人材ポイント計算表のボーナス項目に、「試験研究費等比率が3%超の中小企業における就労」があります。当てはまると5点が加算されます(出入国在留管理庁のポイント計算表より)。

この加点は、高度専門職の基準を定める省令に定められています。研究開発に力を入れている中小企業は、新しい技術や事業を生み出すことが期待されるため、そこで働く外国人の方にポイントを付けるしくみです。

加点を受けるには、次の2つを両方満たす必要があります。

  1. 勤め先(契約を結んで働く会社)が中小企業であること
  2. 勤め先の試験研究費と開発費の合計が、売上高の3%を超えていること

高度専門職1号のイ(研究)・ロ(技術・人文知識など)・ハ(経営・管理)のどの活動でも、同じように加点の対象になります。ハ(経営・管理)の場合は、ご自身が経営・管理する会社が中小企業で、研究費の割合が3%を超えていれば加点の対象になります。

勤め先が中小企業であることが前提

この項目は、中小企業だけが対象です。大企業の場合は、研究費の割合が3%を超えていても加点されません。

中小企業かどうかは、中小企業基本法の定義で判断します。業種ごとに資本金か従業員数のどちらかが基準以下であれば、中小企業にあたります。くわしい基準は、次の記事でまとめています。

「3%ちょうど」では加点されない

省令では、割合が「百分の三を超えること」とされています。3%ちょうどでは足りず、3%を少しでも上回っている必要があります。

なお、出入国在留管理庁の高度人材ポイント制のQ&A Q14では、質問の見出しが「3%以上」となっていますが、答えの中では「3%を超えている」と説明されています。判断するときは「超えているかどうか」で考えてください。

試験研究費等比率の計算のしかた

計算式はシンプルです。省令の定めを式にすると、次のようになります。

(試験研究費+開発費)÷ 売上高 > 3%

高度人材ポイント計算表の試験研究費等比率の計算欄

たとえば、売上高が5億円の会社で、試験研究費と開発費の合計が1,600万円なら、割合は3.2%です。3%を超えているので加点の対象になります。合計が1,500万円なら、割合はちょうど3%なので対象になりません。

計算そのものは簡単ですが、「どの年度の数字を使うか」「どの経費を含めるか」で迷うことがあります。

使うのは申請日の「前の事業年度」の数字

比べるのは、申請日の前の事業年度の数字です。ただし、申請日が前の事業年度が終わってから2か月以内の場合は、その1つ前(前々事業年度)の数字を使います。

たとえば3月決算の会社の場合、5月に申請すると、直前の3月に終わった年度ではなく、その前の年度の数字で判断します。7月に申請すれば、直前の3月に終わった年度の数字を使います。

「決算書ができているなら、直近の年度の数字でよいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、この決まりは高度専門職の基準を定める省令に「申請等の日が前事業年度経過後二月以内である場合は、前々事業年度」と、はっきり書かれています。出入国在留管理庁の高度人材ポイント制のQ&A Q14でも同じように説明されています。

そのため、決算や税金の申告を早めに終えている会社でも、申請日が決算から2か月以内であれば、前々事業年度の数字で判断されます。どの年度の数字になるかは、決算書ができているかどうかではなく、申請日で決まると覚えておきましょう。

勤め先が個人事業主の場合は、申請日の前の年1年間(申請日が1月から3月の場合は前々年)の数字で判断します。

行政書士 谷田

決算が終わったばかりの時期に申請すると、思っていた年度とは別の年度の数字で判断されることがあります。年度によって研究費の割合が大きく違う会社は、申請の時期にも気をつけましょう。

「試験研究費」「開発費」に含まれる費用

「試験研究費」は、新しい製品をつくるためや、新しい技術を生み出すための試験・研究に特別に支出した費用のことです。「開発費」は、新しい技術や新しい経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓、新しい事業の開始のために特別に支出した費用をいいます(開発費は、省令と法人税法施行令第14条第1項第3号の定義)。

研究や開発のために使った材料費、研究・開発の仕事を専門に担当している社員の人件費、外部に研究・開発を委託したときの委託費なども含めて考えます。一方で、ふだんの製造や販売のための経費は、研究・開発のための費用とは区別されます。

決算書に「試験研究費」「研究開発費」という科目がない会社でも、ほかの科目の中に研究・開発の費用が入っていることがあります。その場合は、帳簿や内訳の一覧表で、どの費用が研究・開発にあたるかを示す方法があります(次の章で説明します)。

割る数の「売上高」とは

割る数の「売上高」は、会社の収入の合計から、固定資産や有価証券を売って得た収入を差し引いた金額です。土地や株を売った一時的な収入は含めません。勤め先が個人事業主の場合は、事業所得にかかる収入の合計と比べます。

加点を受けるために必要な資料

高度専門職ビザの申請では、ポイント計算表に書いた点数を裏付ける資料を出します。出入国在留管理庁のポイント計算表の各項目に関する疎明資料(基本例)では、「研究費3%超」について、次のいずれかの資料が挙げられています。

  1. 試験研究費等と売上高が書かれた財務諸表の写し
  2. 売上高が書かれた公的な書類(財務諸表や確定申告書の控えなど)の写しと、帳簿などの写し(試験研究費にあたる箇所に蛍光ペンなどで印を付けたもの)、試験研究費等の内訳をまとめた一覧表
  3. 税理士・公認会計士・中小企業診断士による証明書(書式は自由)

あわせて、勤め先が中小企業であることがわかる資料も必要です。主たる事業がわかる会社のパンフレットなどと、資本金の額がわかる資料(登記事項証明書や決算書など)または従業員数がわかる資料(雇用保険や賃金台帳の写しなど)を用意します。

上記の書類は、在留資格認定証明書交付申請のときに提出する書類の一例です。申請の種類や申請人の方の状況によって、必要な書類は全く異なります。全てをそろえて提出したとしても、入管から追加の資料を求められ、別途資料の提出が必要になることがあります。

なお、出入国在留管理庁の高度専門職のページでは、ポイントの合計が70点以上あることを確認できる資料を出せば足り、当てはまる項目すべての資料を出す必要はないとされています。ほかの項目だけで70点に届く方は、この加点を使わずに申請することもできます。

「研究費3%超」の加点を使うときの注意点

会社の決算書を見ないと判断できない

この加点を受けられるかどうかは、勤め先の決算の数字を見ないと判断できません。外国人ご本人だけでは確かめられないため、会社に決算書や帳簿を見せてもらう必要があります。

会社によっては、決算書を社員に見せたくない場合や、ご本人が会社に頼みにくい場合もあるかもしれません。そのようなときは、税理士などの証明書で示す方法もあります。会社の採用担当者や経理の方に、早めに相談しておくと安心です。

70点ぎりぎりの方は特に慎重に

高度専門職ビザは、合計70点以上で対象になります。あと5点で70点に届くという方にとって、この加点は大きな意味があります。

ただし、計算に使う年度や経費の数え方を間違えていると、加点が認められないことがあります。この5点を含めてようやく70点に届く方は、加点が認められなければ基準を下回り、不許可になるおそれがあります。申請の前に、数字と資料をしっかり確かめることが大切です。

学歴・職歴・年収など、ほかの項目の数え方は高度人材ポイント計算表の項目を解説した記事で、高度専門職ビザ全体のしくみは高度専門職ビザの解説記事でご確認いただけます。

行政書士 谷田

どの費用を研究・開発の費用として数えられるかは、会社の経理のしかたによって判断が分かれることがあります。ご自身で計算した結果に少しでも不安があれば、申請の前にご相談ください。

技術・人文知識・国際業務から高度専門職への変更については、こちらの記事で違いや注意点をまとめています。

まとめ

「研究費3%超」の加点は、勤め先の中小企業が研究開発に力を入れている場合に受けられる5点のボーナスです。

  • 勤め先が中小企業で、試験研究費と開発費の合計が売上高の3%を超えていれば5点が加算される
  • 3%ちょうどでは加算されず、大企業は対象外
  • 使うのは申請日の前の事業年度の数字(決算から2か月以内の申請は前々事業年度)
  • 財務諸表の写し、帳簿と内訳の一覧表、税理士などの証明書のいずれかで示す
  • 会社の資料が必要になるため、採用担当者の方の協力が欠かせない
行政書士 谷田

ポイント計算や資料の準備に不安がある方や、申請の手間を減らしたい方は、ぜひ一度東京セントラル行政書士事務所にご相談ください。

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よくある質問

研究費の割合がちょうど3%の場合は加点されますか?

いいえ。条件は「3%を超えること」なので、ちょうど3%では加点されません。

>>加点される条件を見る

大企業で、研究費の割合が3%を超えています。加点されますか?

いいえ。この項目は中小企業だけが対象です。大企業の場合は、研究費の割合にかかわらず加点されません。

決算書に「試験研究費」という科目がありません。加点は受けられませんか?

科目がなくても、ほかの科目に研究・開発の費用が含まれていれば、帳簿の写しと内訳の一覧表、または税理士などの証明書で示す方法があります。

>>必要な資料を見る

決算が終わった直後に申請します。どの年度の数字を使いますか?

前の事業年度が終わってから2か月以内に申請する場合は、その1つ前(前々事業年度)の数字を使います。

>>計算のしかたを見る

ほかの項目で70点に届く場合も、研究費の資料を出す必要がありますか?

ポイントの合計が70点以上あることを確認できる資料を出せば足りるとされています。ほかの項目だけで70点に届く場合は、この項目の資料を出さなくてもかまいません。

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