技術・人文知識・国際業務ビザの学歴要件・実務経験要件を解説

この記事でわかること

 「大学を卒業していないと技術・人文知識・国際業務ビザは取れない?」「専修学校卒業でも大丈夫?」「10年の実務経験があれば学歴は関係ない?」本記事では、技術・人文知識・国際業務ビザの学歴・経験要件を4つのルートに整理し、具体的なケーススタディとともに詳しく解説します。

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はじめに

在留資格「技術・人文知識・国際業務」を申請するためには、従事しようとする業務の種類に応じた「学歴・実務経験要件」を満たすことが必要です。

自分がどのルートで申請できるかを正確に把握することが、申請準備を進める上での第一歩です。本記事では、各ルートの要件の詳細・ルートごとの注意点・具体的なケーススタディを詳しく解説します。

学歴要件の全体像

技術系・人文系職務で申請する場合の4つのルート

技術系・人文系職務で申請する場合の学歴・経験要件(以下のいずれかを満たすこと)
ルートA:大学卒業以上+専攻と業務の関連性
ルートB:日本の専修学校専門課程修了(専門士等)+専攻と業務の関連性
ルートC:10年以上の実務経験(学歴不問)
ルートD:法務大臣告示の情報処理技術者試験合格または資格保有(学歴・経験不問)

4つのルートはいずれか1つを満たせば要件充足です。複数のルートを同時に満たす場合でも、1つで十分です。自分に最も有利なルートを選択して申請してください。

国際業務系職務で申請する場合の要件

翻訳・通訳・語学指導・広報・デザイン等の「外国人特有の感性を必要とする業務」に従事する場合です。

国際業務職務で申請する場合従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験を有すること 。ただし、大学を卒業した者が翻訳・通訳または語学の指導に係る業務に従事する場合は3年の実務経験が免除される 。

大卒で翻訳・通訳・語学指導:実務経験不要
大卒で広報・デザイン・商品開発等:3年の実務経験が必要

ルートA:大学卒業以上の場合

大学卒業(またはこれと同等以上)+専攻と業務の関連性

【要件】
・大学(4年制・短期大学・大学院を含む)を卒業またはこれと同等以上の教育を受けていること
・従事しようとする業務に必要な技術または知識に関連する科目を専攻していること
・外国の大学も含まれる(外国の4年制大学・修士・博士等)
・専攻科目と業務内容が「関連している」ことで足りる(完全に一致していなくてもよい)
・大学卒業者は専攻と業務の関連性が比較的緩やかに判断される

【注意点・補足】
・短期大学(2年制)も「大学」に含まれる(学位証明書必須)
・専門職大学・専門職短期大学も大学と同様に扱われる
・全く無関係な専攻と業務の組み合わせは問題となる場合がある

大学卒業者の専攻と業務の関連性の判断

大学卒業者については、専攻と業務の関連性が比較的緩やかに判断されます。これは大学が「広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的・道徳的および応用的能力を展開させることを目的とする」とされているためです。

専攻と職務内容の関連性がある具体例は以下の通りです。

専攻従事しようとする職務
情報工学・情報学システムエンジニア・プログラマー・AI開発
機械工学機械設計・製品開発・CADエンジニア
経営学・MBA経営企画・マーケティング・事業開発
法学・国際法法務・コンプライアンス・契約管理
英文学・語学翻訳・通訳・語学教育
建築学建築設計・施工管理・BIM
化学・応用化学製薬企業の品質管理・研究補助
経済学金融業務・データ分析・マーケティング
農学・生命科学食品メーカーの商品開発・品質管理
社会学・心理学人事・採用・企業研修企画
文学・歴史学出版業務・編集・コンテンツ制作
体育・スポーツ科学スポーツ関連企業の企画・マネジメント

関連性の判断が曖昧な場合は、申請理由書等に「なぜこの専攻がこの業務に関連していると言えるのか」を具体的に記載することが必要です。また、専攻だけでなく、履修科目との関連性を説明するという方法も有効です。

専修学校卒業者の専攻と業務の関連性(より厳格)

専修学校は「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、または教養の向上を図ること」を目的としており、大学とは設置目的が異なります。そのため、専修学校の専攻科目と業務内容については「相当程度の関連性」が必要とされます。

専修学校の専攻従事しようとする業務
情報系(プログラミング・IT)システムエンジニア・プログラマー
ビジネス・経営系営業・マーケティング・経営補助
デザイン系(グラフィック・Web)グラフィックデザイナー・UI/UXデザイン
観光・ホテル系ホテルの企画・マーケティング(フロント業務除く)
調理系専門学校食品メーカーの商品開発

日本語教育機関の専門課程修了者の特別扱い

日本語学校(専修学校の専門課程として設置された日本語教育機関)を修了した外国人については、特別な取り扱いがあります。

日本語学校 修了者の扱い

日本語教育機関である専修学校の専門課程を修了した者は、「専門士」の称号を取得していたとしても、原則として技術・人文知識・国際業務ビザの基準を満たさない。

例外1:外国の大学において修業年限が3年以上の課程を修了することにより学士の学位に相当する学位を授与された者等

例外2:従事しようとする業務に関連する業務に3年以上の実務経験がある場合

日本語学校のみを修了した留学生は、卒業後の就職で技術・人文知識・国際業務ビザを学歴要件で申請できない点に注意。

外国人留学生キャリア形成促進プログラム認定学科修了者の特例

文部科学大臣が認定した「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」の認定学科を修了した者については、専修学校でありながら専攻と業務の関連性を柔軟に判断することとされています。

認定学科修了者の特例

文部科学大臣の認定を受けた専修学校専門課程(認定学科)を修了した者は、専攻科目と業務内容の関連性について柔軟に判断される

認定学科かどうかは認定学科リスト(文部科学省)で確認する

認定学科修了証明書の提出が必要

ルートC:10年以上の実務経験(学歴不問)

10年以上の実務経験(学歴不問)

要件】
・従事しようとする業務に関連する分野で10年以上の実務経験を有すること
・学歴は問わない(高校卒業・専修学校修了・大学未卒業等でも申請可能)
・大学・高専・高等学校・中等教育学校後期課程・専修学校専門課程において当該技術または知識に係る科目を専攻した期間も算入可

【注意点・補足】
・「10年以上」の起算点は業務に就き始めた時点(学校在籍中の専攻期間を含む場合あり)
・実務経験は従事しようとする業務と「関連する分野」での経験でよい
・各期間を証明する在職証明書等の書類準備が重要
・特定技能・技能実習の活動で得た経験は原則として実務経験として評価されない
・同一企業での継続勤務でなくても、断続的な経験を合算できる場合がある

10年の計算方法

10年以上の実務経験の計算において、学校在籍中の専攻期間を含められる場合があります。具体的な計算例を確認しましょう。

経歴パターン算入できる期間10年の充足
情報系専門学校2年+実務8年専門学校専攻期間2年+実務経験8年○ 充足(合算で10年)
高校卒業後、異分野で10年勤務関連する業務でない期間は算入不可× 不充足(関連分野の経験が10年ない)
特定技能で5年+関連業務5年特定技能は原則算入不可。関連業務5年のみ× 不充足

特定技能制度や技能実習で受け入れられた外国人の活動で得た経験は、原則として技術・人文知識・国際業務ビザの「実務経験」として評価されません。特定技能等のキャリアアップは「特定技能2号」への移行が基本とされています。

IT特例:情報処理技術者試験・資格による学歴要件の免除

法務大臣告示の情報処理技術者試験合格または資格保有(学歴・経験不問)

【要件】
・法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格していること
・法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有していること
・該当する場合、学歴・実務経験不問
・IT業務(情報処理業務)に従事しようとする場合に適用

【注意点・補足】
・IT特例はITエンジニアとしての業務に限って適用される
・会計・マーケティング等のIT以外の業務には適用されない
・対象となる試験・資格は法務省告示(平成25年法務省告示第437号)に列挙

IT特例の対象となる主な試験・資格

法務省告示第437号に掲げる主な情報処理技術者試験・資格は入管HPに具体的に記載されています。

IT特例に該当する試験・資格の完全なリストは法務省告示(平成25年法務省告示第437号)で確認できます。中国の系統分析員(システムアナリスト)・高級程序員(ソフトウェアエンジニア)・程序員(プログラマー)資格については有効期限失効後も有効なものとして扱われます。

ケーススタディ12例

具体的なプロフィールに基づいて、要件を充足できるか(または充足できないか)を見てみましょう。

CASE 1 情報工学専攻の大学卒業・新卒でITエンジニア採用

【プロフィール】
・最終学歴:日本の大学(情報工学専攻)卒業
・実務経験:なし(新卒採用)
・従事予定業務:Webシステム開発・プログラミング

【判定】 ○ 要件充足 (大学卒業+専攻との直接関連)
専攻(情報工学)と業務(ITシステム開発)の関連性は明確。実務経験がなくても大学卒業のみで申請可能。最もシンプルなケース。

CASE 2 情報系専門学校(専門士)卒業・プログラマー採用

【プロフィール】
・最終学歴:日本の専修学校専門課程(情報学科・専門士)修了
・実務経験:なし
・従事予定業務:Webアプリケーション開発・プログラミング

【判定】 ○ 要件充足 (ルートB(専修学校修了+直接関連))
日本の専修学校専門課程(情報学科)修了で専門士取得。情報系専攻とプログラマー業務の関連性は直接的であり問題なし。専修学校卒業でもIT業務は最も申請しやすいパターンのひとつ。

CASE3 観光系専門学校(専門士)卒業・ホテルのフロント採用

【プロフィール】
・最終学歴:日本の専修学校専門課程(観光学科・専門士)修了
・実務経験:なし
・従事予定業務:ホテルのフロントスタッフ(接客・チェックイン対応等)

【判定】 × 要件不充足(技人国対象業務ではない)
フロントスタッフの接客業務は「自然科学または人文科学の分野に属する技術または知識を必要とする業務」ではなく、単純な接客業務として技術・人文知識・国際業務ビザの対象外となる可能性が高い。「観光事業の企画・マーケティング」等の高度な業務に従事する場合は認められる場合がある。

CASE 5 高校卒業・ITエンジニアとして13年の実務経験

【プロフィール】
・最終学歴:高校卒業(大学・専門学校未卒)
・実務経験:IT系企業でプログラマー・システムエンジニアとして13年
・従事予定業務:システム開発・プログラミング

【判定】 ○ 要件充足 (ルートC(10年以上の実務経験))
大学・専修学校の卒業はないがIT系の実務経験が13年あるためルートC充足。高校での情報関連科目の専攻期間も算入可能なため合計10年超となる。各期間を証明する在職証明書・業務内容説明書の整備が重要

CASE 6 基本情報技術者試験合格・高校卒業のITエンジニア志望

【プロフィール】
・最終学歴:高校卒業
・保有資格:基本情報技術者試験合格(法務省告示の対象試験)
・実務経験:2年(IT経験あり)
・従事予定業務:プログラマー・システム開発

【判定】 ○ 要件充足 (IT特例(情報処理技術者試験合格))
基本情報技術者試験は法務省告示に掲げるIT特例対象試験。高校卒業のみで実務経験が10年未満であっても、IT特例により第1号の学歴・経験要件が免除される。IT業務に従事する場合に限り適用されるため、従事予定業務がITシステム開発であることが重要。

CASE 7 大学卒業・翻訳会社へ就職(実務経験なし)

【プロフィール】
・最終学歴:外国の大学(言語学専攻)卒業
・実務経験:なし
・従事予定業務:日本語・英語間の翻訳業務

【判定】 ○ 要件充足 (大学卒業+専攻関連)または(大卒翻訳は実務経験免除)
言語学専攻の大学卒業で専攻と翻訳業務の関連性は明確。また、「大学を卒業した者が翻訳に係る業務に従事する場合」として3年の実務経験が免除されるという考え方もできる。どちらのルートでも申請可能であり、実務経験なしで申請できる。

CASE 8 専修学校(日本語学科・専門士)修了・一般事務職採用

【プロフィール】
・最終学歴:日本の専修学校(日本語学科・専門士)修了
・実務経験:なし
・従事予定業務:一般事務・データ入力

【判定】 × 要件不充足 (日本語教育機関修了者は原則対象外)
日本語学校(専修学校専門課程の日本語教育機関)を修了した者は、専門士の称号があっても原則として技術・人文知識・国際業務ビザの基準を満たさない。外国の大学での学士学位等がある場合は許可の可能性がある。

CASE 9 大学卒業・デザイン会社にグラフィックデザイナーとして採用(実務経験3年)

【プロフィール】
・最終学歴:外国の大学(美術・デザイン学部)卒業
・実務経験:外国でのグラフィックデザイナー3年
・従事予定業務:グラフィックデザイン・ブランディング

【判定】 ○ 要件充足(大学卒業+専攻関連)または(服飾・室内装飾に係るデザイン実務経験3年以上)
デザイン学部卒業で専攻とデザイン業務の関連性は直接的。また、デザイン業務は「服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務」にも該当する可能性があるが、(大学卒業+専攻関連)で申請する方が手続きがシンプル。

CASE 10 大学院(修士)修了・研究開発職採用

【プロフィール】
・最終学歴:日本の大学院修士課程(化学専攻)修了
・実務経験:なし(新卒採用)
・従事予定業務:化学メーカーの製品品質管理・技術開発

【判定】 ○ 要件充足 (大学以上+専攻直接関連)
大学院修士課程修了は「大学を卒業しまたはこれと同等以上の教育を受けた」に該当しルートA充足。化学専攻と化学メーカーの品質管理・技術開発の関連性は明確。

CASE 11 高校卒業・特定技能5年+関連実務5年

【プロフィール】
・最終学歴:外国の高校卒業
・経験:特定技能1号(製造業)で5年+関連する製品品質管理業務で5年
・従事予定業務:製造業の品質管理・技術指導

【判定】 × 要件不充足(特定技能の経験は算入不可) (実務経験ルートの10年に特定技能経験は算入できない)
特定技能の活動で得た経験は原則として実務経験として評価されない。したがって関連する実務経験は5年のみとなり、10年に達しない。技術・人文知識・国際業務ビザへの変更ではなく、特定技能2号への移行を検討することが適切。

CASE 12 短期大学卒業・会計事務所でのIT会計サポート業務

【プロフィール】
・最終学歴:日本の短期大学(経営情報学科)卒業
・実務経験:なし(新卒採用)
・従事予定業務:会計ソフトを使った経理・財務補助業務

【判定】 ○ 要件充足 (大学相当以上+専攻直接関連)
短期大学も「大学」に含まれるため学歴要件での申請が可能。

よくある質問(Q&A)

大学の専攻が全く関係ない(例:音楽専攻でITエンジニア就職)場合、申請できますか?

大学卒業者は専攻と業務の関連性が比較的緩やかに判断されますが、「音楽専攻→ITエンジニア」のように全く無関係な組み合わせでは問題となる場合があります。

ただし、大学在学中にプログラミング関連の科目を履修していた場合や、IT特例に該当する場合は申請できる可能性があります。 業務内容説明書に「大学での学習がどのように業務に活かされるか」を具体的に説明することが重要です。判断が難しい場合は行政書士に相談することをおすすめします。

外国の大学を卒業しましたが、日本の大学とは制度が違います。「大学卒業以上」として認められますか?

はい、外国の大学も「大学」に含まれます。ただし、その国の教育制度上で「大学(University・College等)」に相当する教育機関を卒業していることが必要です。

外国の大学の学歴証明書(卒業証明書・学位証明書)を日本語訳とともに提出することが必要です。 4年制大学でない場合(2年制・3年制の高等教育機関等)については、「大学と同等以上の教育」に当たるかどうか個別に判断される場合があります。

専修学校(専門学校)を卒業後、実務経験が7年あります。学歴要件ルートと実務要件ルートのどちらで申請すべきですか?

専攻と業務の関連性がある場合:学歴要件で申請する方がシンプルです(専修学校修了者は専門士取得が条件)。

専攻と業務の関連性が薄い場合学歴要件申請では難しく、実務要件申請を目指すことになります。専修学校での専攻期間(2〜3年)を加算すると10年に近づく場合もあります。 現時点で10年に届かない場合は、経験を積んでから実務要件申請で申請するか、就職先がIT企業の場合には、IT特例に該当するかを確認することをおすすめします。

10年の実務経験は同じ業種でなければなりませんか?

「同じ業種」である必要はありませんが、「従事しようとする職務に関連する」実務経験である必要があります。

例えば、ITエンジニアとして申請する場合は「IT関連の業務」での実務経験が必要であり、全く別分野(飲食業・建設業等)での経験は算入されません。 複数の企業・機関での経験を合算することは可能です。各期間を証明する在職証明書・業務内容説明書を準備することが必要です。

情報処理技術者試験の「ITパスポート」を持っています。IT特例が使えますか?

ITパスポート試験は法務省告示(平成25年法務省告示第437号)の対象外です。

まとめ

技術・人文知識・国際業務ビザの学歴・経験要件の要点を整理します。

ルート要件の核心学歴経験主な対象者
A大学卒業+専攻との関連性大学以上不問大卒・院卒の新卒・転職者
B専修学校修了(専門士)+専攻との関連性(厳格)日本の専修学校不問専門学校卒の留学生等
C10年以上の実務経験不問10年以上高卒・専門学校卒のベテラン
IT特例IT系試験合格・資格保有不問不問IT試験合格者・IT資格保有者
申請前チェックリスト

・ 自分の学歴・経験が上記表のルートA・B・C・IT特例のいずれかを満たすかを確認する
・ 専攻科目と従事しようとする業務の関連性を整理し、説明できるよう準備する
・ 専修学校卒業者は専門士・高度専門士の称号取得を確認する。(日本語学校修了者の専門士の称号は技人国の対象外)
・ IT特例に該当する試験・資格を保有している場合は証明書を準備する
・ 10年の実務経験を使う場合は各期間の在職証明書等を揃える
・ 判断が難しい場合は採用内定段階で行政書士に相談する

学歴要件の充足は個別の学歴・専攻・業務内容の組み合わせによって判断が異なります。不明な点は早めに行政書士にご相談ください。

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