「入社後6か月は現場研修があるのですが、技術・人文知識・国際業務ビザで大丈夫ですか?」研修期間があってもビザを取得できる場合があります。ただし、研修の内容・期間・対象者によって判断が大きく異なります。本記事では、実務研修期間と技術・人文知識・国際業務ビザの関係を詳しく解説します。

✓入管専門行政書士です
✓在留資格の種類を問わずサポートします
✓許可の自信があるからこそ完全成功報酬型を原則としています
✓メール・LINE・WeChatチャットなどでお気軽にお問合せください
\ 初回相談無料! /
はじめに
日本企業では、新入社員(新卒採用・中途採用を問わず)に対して採用直後に実務研修期間を設けることがあります。この研修では、工場での製造ライン体験・店舗での販売研修・コールセンター業務体験等、技術・人文知識・国際業務ビザの対象とならない現場業務が含まれることがあります。
「在留資格に対応する業務に従事する」というビザの原則から考えると、現場研修期間中は技術・人文知識・国際業務ビザの活動範囲外の業務に従事していることになり、問題が生じるように思えます。しかし入管は、一定の条件を満たす実務研修については許容する場合もあります。
本記事では、この「実務研修の取り扱い」について、許容される条件・期間の考え方・在留期間への影響・企業側の準備事項を詳しく解説します。
実務研修と技術・人文知識・国際業務ビザの原則的な関係
原則:在留資格に対応する活動への従事が必要
技術・人文知識・国際業務ビザで在留する外国人は、在留資格の範囲内の活動(自然科学・人文科学の分野に属する技術・知識を要する業務または外国の文化に基盤を有する業務)に従事することが求められます。
したがって、製造ラインでの組み立て作業・倉庫での荷物仕分け・販売店でのレジ打ち等の単純作業や現場作業のみを行う期間は、原則として技術・人文知識・国際業務ビザの活動範囲外となります。
技術・人文知識・国際業務ビザの活動とは「自然科学・人文科学の分野に属する技術・知識を要する業務または外国の文化に基盤を有する業務」への従事であり、現場での単純作業・補助作業は原則として対象外
例外的な許容:研修期間の扱い
しかし入管は、一定の条件を満たす実務研修については、在留期間全体での活動を総合的に捉えた上で、許容する場合があります。
「技術・人文知識・国際業務」という在留資格で日本に滞在する外国人は、原則として、その資格に見合った業務に従事していることが求められます。
ところが実務の現場では、企業が新入社員に対して入社後しばらくの間、実務研修を実施するケースが少なくありません。外国人社員もこの研修に参加することになるわけですが、研修中の業務内容だけを取り出してみると、「これは技術・人文知識・国際業務には当てはまらないのでは?」と見える場面も出てきます。
こうしたケースで一律に在留資格に該当しないと判断されるわけではありません。たとえば、その研修が日本人の大卒社員にも同じように課されているものであり、しかも研修期間が在留期間の大半を占めるほど長くないのであれば、相当性が認められる範囲で、当該活動も許容される取り扱いとなっています。
実務研修が許容される3つの条件
実務研修期間が技術・人文知識・国際業務ビザで許容されるためには、以下の3つの条件を満たすことが必要です。
・日本人の大卒社員等に対しても同様に行われる実務研修の一環であること
・外国人社員だけにしか設定されていない研修は許容されない
・日本人社員との差異が設けられているような研修も、合理的な理由(日本語研修等)がある場合を除き許容されない
→ 「日本人社員も同じ研修を受けるか」が最重要の判断ポイント
・研修期間が「在留期間」の大半を占めるような場合は許容されない
「在留期間」とは一回の許可ごとに決定される期間ではなく、雇用契約書・研修計画等から申請人が今後本邦で活動することが想定される「技術・人文知識・国際業務の在留資格をもって在留する期間全体」を指す
→ 雇用契約期間全体の中での研修期間の比率が重要
・実務研修に従事することに相当性が認められること
相当性の判断には日本人社員を含めた入社後のキャリアステップ・各段階での具体的職務内容を示す資料(研修計画書等)が参考となる
採用から1年を超えて実務研修に従事する申請については、研修計画の提出を求め実務研修期間の合理性が審査される
「在留期間の大半を占めない」の考え方
「在留期間」の正確な意味
実務研修が「在留期間の大半を占めない」かどうかを判断する際の「在留期間」は、1回の許可で決定された期間(例:1年)ではなく、雇用契約全体を通じた技術・人文知識・国際業務ビザでの在留期間全体を指します。
・雇用契約期間が5年→在留期間全体は5年として評価
・雇用契約が更新予定で長期にわたる場合→長期にわたる期間全体として評価
在留期間「1年」が決定された場合でも、今後も継続して勤務予定なら1年間全て研修でも認められる場合がある
→ 全体の雇用期間における研修の比率が重要
許可される可能性が高い研修と許可されない可能性が高い研修
具体的な研修の種類・内容・対象者に基づいて、許可される可能性が高い研修と許可されない可能性が高い研修を整理します。
【状況】日本の大卒新入社員・外国人社員全員が入社後3か月間、工場での製造ライン体験・店舗での販売体験研修を受ける。研修終了後は設計・開発等の技人国職務に配属される予定。
【判断理由】日本人大卒社員と同様の研修であり、長期雇用(5年以上想定)における3か月は大半を占めない。入社後のキャリアステップも明確であり相当性あり。許容される。
【状況】ソフトウェア会社が全新入社員に対して、入社後6か月間の営業同行・顧客対応体験・現場業務研修を実施。その後はシステムエンジニアとして配属予定。長期雇用(無期)。
【判断理由】日本人社員も同様の研修を受ける一環であり、無期雇用における6か月の研修は大半を占めない。SE職への配属が明確であり研修の合理性あり。許容される可能性が高い。
【状況】大手製造業が新入社員(日本人・外国人問わず)に対して、入社後最初の1年半を様々な部署でのローテーション研修(製造・営業・管理等)に充てる。その後は技人国職務に配属。長期雇用(10年以上想定)。
【判断理由】採用から1年を超えて実務研修に従事する申請については、研修計画の提出を求め実務研修期間の合理性が審査される。長期雇用における1年半の研修は大半を占めないが、1年超の研修計画書の準備・日本人社員との同様性の証明が必要。
【状況】3年間の雇用契約の外国人に対し、入社から2年間は工場での製造ライン業務(単純作業)に従事させ、3年目からシステムエンジニアとして配属する計画。
【判断理由】雇用契約期間3年のうち2年間が研修——在留期間の大半(3分の2)を占める。このような申請は在留資格の性格に反するとして許容されない。
【状況】日本人新卒社員には1か月の研修のみ実施するが、外国人社員には「日本語・業務習得」を理由として12か月間の製造現場での単純作業研修を課す。
【判断理由】日本人社員との差異が著しく大きい(1か月vs12か月)。合理的な理由(日本語研修3か月程度等)の範囲を大きく超えており許容されない。
在留期間への影響
実務研修期間がある場合の在留期間
実務研修期間が設けられている場合、入管は研修修了後に適切に技術・人文知識・国際業務に該当する活動に移行していることを確認する必要があるため、在留資格決定時等には原則として在留期間「1年」が決定されます。
実務研修期間がある場合は、初回の在留期間として「1年」が決定されることが原則です。通常は3年が得られるケースでも、研修期間があることで1年になる場合があります。これは研修終了後の活動移行を確認するためです。
1年後の更新申請時の確認事項
在留期間「1年」で初回許可された場合、1年後の更新申請では以下の事項が確認されます。
・実務研修を適切に修了しているか(研修修了証・キャリアアッププランとの整合性)
・研修修了後、適切に技術・人文知識・国際業務に該当する業務(技人国業務)に移行しているか
・現在の業務内容が技術・人文知識・国際業務ビザの対象となる業務であるか これらに問題がなければ、更新が許可される
キャリアステップ中間研修への対応
採用当初の研修だけでなく、キャリアステップの一環として契約期間の途中で実施されるような実務研修についても、同様に取り扱われます。
技術・人文知識・国際業務ビザで在留中に、昇進・部署異動に伴う新たな実務研修が設けられる場合
この場合も同様に、日本人社員と同様の研修であり相当性があれば許容される
企業側が準備すべき書類・資料
実務研修期間がある外国人を採用する企業側は、以下の書類・資料を準備することが求められます。これらは在留資格申請の際に重要な役割を果たします。
必須・重要な書類
雇用契約書
・採用後の業務内容(研修終了後の技人国対象業務)・報酬・雇用期間が明記されたもの
・「研修期間中は○○業務に従事し、研修終了後は△△業務に従事する」旨の記載があると望ましい
・雇用期間が明確であること(長期雇用・無期雇用の場合はその旨を明記)
キャリアアッププラン・ 研修計画書
・採用から技術・人文知識・国際業務に該当する業務への移行までのスケジュール
・研修の各段階での具体的な内容・期間・目的
・研修終了後の配属先業務の詳細 採用から1年を超える研修がある場合は特に重要(入管から求められる場合あり)
日本人社員との 同様性を示す資料
・日本人新入社員(大卒等)に対して同様の研修を実施していることを示す資料
・入社年度の日本人社員の研修スケジュールや研修計画書
・過去の日本人社員の研修実施事例
・研修内容・期間が外国人社員だけに設定されたものでないことの説明
ケーススタディ5例
実際の研修期間の設定と申請の判断について、具体的なケースで確認します。
【状況】
・採用形態:無期雇用(長期雇用)の新卒採用
・研修内容:入社後3か月間、カスタマーサポート体験・営業同行・各部署見学
・日本人社員:同様に全員3か月の研修あり
・研修終了後:システムエンジニアとして配属
【状況】
・現在:技術・人文知識・国際業務ビザで在留中(SE業務に従事)
・異動:マーケティング部門への異動に伴い、3か月間の販売現場体験研修
・日本人社員:同様の現場体験研修あり
・研修終了後:マーケティング業務に従事
【状況】
・採用形態:無期雇用・大卒採用
・研修内容:入社後1年間、製造・営業・管理・設計各部署を3か月ずつローテーション
・日本人社員:全員同様のローテーション研修あり
・研修終了後:設計・技術開発部門へ配属
【状況】
・採用形態:無期雇用
・研修内容:日本語研修3か月(外国人社員のみ)+業務理解のための現場研修3か月(日本人社員は1か月のみ)
・研修終了後:マーケティング部門での業務
【状況】
・採用形態:3年間の固定期間雇用
・研修内容:採用後2年間は製造現場での作業研修(単純作業含む)
・3年目から:マーケティング部門での就労
・日本人社員:1か月のみ研修
よくある質問(Q&A)
- 研修期間中は技術・人文知識・国際業務ビザで在留していて問題ないですか?
-
一定の条件(日本人と同様の研修・在留期間の大半を占めない・相当性あり)を満たす研修であれば、技術・人文知識・国際業務ビザで在留しながら研修期間を過ごすことは許容されています。
ただし、入管は研修期間中の活動と研修終了後の技人国業務への移行を総合的に評価します。研修が終了したら速やかに技術・人文知識・国際業務に該当する業務に移行し、その後の更新申請でその事実を示すことが重要です。 - 入社後の研修が工場での単純作業です。これでも大丈夫ですか?
-
工場での単純作業が研修に含まれる場合でも、①日本人社員も同様の研修を受けている、②雇用期間全体に対して研修期間が短い(大半を占めない)、③研修終了後に技人国業務に移行する計画が明確といった条件を満たせば許容される可能性があります。
ただし、工場の単純作業が長期にわたる場合や、日本人社員との差異が大きい場合は問題となります。採用企業に研修内容の詳細・日本人社員との比較・キャリアアッププランの文書化を依頼した上で、行政書士に相談することをおすすめします。
- 研修期間中の給与は研修手当として低めに設定されています。報酬要件(日本人と同等以上)に問題はありますか?
-
技術・人文知識・国際業務ビザの報酬要件(日本人が同様の業務に従事する場合に受ける報酬と同等額以上)は、研修期間中も適用されます。
研修期間中の給与・手当が日本人の新入社員が同様の研修を受ける場合の水準と同等以上であれば問題ありません。 外国人であることを理由として著しく低い研修手当を設定することは報酬要件違反となります。日本人新入社員との報酬水準の整合性を確認してください。
- 研修中に、研修とは別に技術・人文知識・国際業務に該当する業務も一部担当します。この場合はどうなりますか?
-
研修期間中でも、技術・人文知識・国際業務に該当する業務を一部担当する場合は、研修期間の問題が緩和されます。
「研修の一環として現場体験もしながら、主たる業務は技人国業務」という形態であれば、在留資格に対応する活動に従事していると評価されやすくなります。 雇用契約書・業務内容説明書に研修期間中の業務内容(研修と技人国業務の割合)を具体的に記載することが重要です。
まとめ
実務研修期間と技術・人文知識・国際業務ビザの関係の要点を整理します。
実務研修が許容される条件(3つすべてが必要)
日本人の大卒社員等に対しても同様に行われる実務研修の一環であること
在留期間(雇用契約全体)の大半を占めるものでないこと
実務研修に従事することに相当性(合理性)があること
申請・採用前チェックリスト
- 日本人社員も同様の研修を受けることを証明できる書類を準備する
- 雇用期間全体に対して研修期間が過度に長くないかを確認する
- 研修計画書・キャリアアッププランを文書化し、研修終了後の技人国業務への移行を明示する
- 研修期間が1年を超える場合は詳細な研修計画書の準備が特に重要
- 外国人のみへの差別的な研修設定がないかを確認する
- 初回在留期間は「1年」が決定される可能性が高い
- 不安な点は採用内定の段階で早めに行政書士に相談する

