「母国で、政府の補助金を受けた研究に参加したことがある。高度人材ポイントの加点になるのだろうか」
大学や研究機関、企業の研究部門で働く方から、こうしたご質問をいただくことがあります。
高度人材ポイント計算表の「研究実績」には、「入国前に公的機関からグラントを受けた研究に従事した実績」という項目があります。グラント(grant)とは、研究のために交付される補助金や研究費のことです。ただし、どんな研究費でも数えられるわけではなく、資金を出した機関や回数に条件があります。
この記事では、この項目で加算される点数と条件、申請のときに必要な資料と注意点を解説します。
※正確には在留資格「高度専門職1号」ですが、この記事では、一般的に伝わりやすい「高度専門職ビザ」という表記を使っています。

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「グラントを受けた研究」で加算される点数
高度人材ポイント計算表には「研究実績」という項目があり、グラントを受けた研究の実績はその中の1つです。研究実績として数えられるのは、次の4つです(高度専門職の基準を定める省令より)。
- 発明者として特許を受けた発明が1件以上ある
- 外国政府から補助金や競争的資金などを受けた研究に3回以上たずさわった(この記事のテーマ)
- 学術論文データベースに登録されている学術雑誌に、論文が3本以上載っている
- 1〜3と同じくらいの研究実績があると申し出て、法務大臣に認められた
加算される点数は、高度専門職1号のどの活動で申請するかによって変わります(出入国在留管理庁のポイント計算表より)。
- 高度専門職1号イ(研究・教育などの活動): 20点。上の4つのうち2つ以上に当てはまれば25点
- 高度専門職1号ロ(技術・人文知識などの活動): 15点(2つ以上に当てはまっても15点)
- 高度専門職1号ハ(経営・管理の活動): 研究実績の項目がないため加点なし
経営・管理の活動で申請する1号ハの方は、グラントを受けた研究の実績があっても加点されません。この実績を生かせるのは、1号イと1号ロで申請する方です。
論文の実績については、研究論文の実績について解説した記事もあわせてご覧ください。
グラントを受けた研究で加点されるための条件
ポイント計算表では「入国前に公的機関からグラントを受けた研究に従事した実績」と書かれていますが、省令では「外国政府から補助金、競争的資金その他の金銭の給付を受けた研究に三回以上従事したことがあること」と定められています。整理すると、次の3つを満たす必要があります。
- 研究のお金を出したのが外国の政府であること
- 申請する方が、その研究に実際にたずさわっていたこと
- 1と2を満たす研究が3回以上あること
条件1: 外国政府から補助金などを受けた研究であること

対象になるのは、外国の政府から、補助金・競争的資金(応募と審査を経て交付される研究費)などのお金を受けた研究です。日本に来る前に、外国でたずさわった研究が想定されています。
ポイントは、お金を出したのが「政府」かどうかです。大学の学内予算や、民間企業・民間財団からの研究費は、外国政府からの給付とはいえないため、この項目では数えられません。
なお、外国政府であれば、母国の政府に限られているわけではありません。たとえば、留学していた国の政府から研究費を受けた研究も、条件に合えば対象になり得ます。
条件2: 申請する方がその研究にたずさわっていたこと
省令では、補助金などを受けた研究に「従事したこと」が求められています。研究の代表者でなければいけないとは書かれていませんが、申請する方がその研究に実際にたずさわっていたことを、資料で示す必要があります。
研究チームの一員として参加していた場合、交付を受けた書類に代表者の名前しか書かれていないことがあります。そのようなときに、ご本人がたずさわったことをどう示すかは、ケースによって判断が分かれます。
条件3: 条件に合う研究が3回以上あること
条件1と条件2の両方を満たす研究が、3回以上必要です。条件に合う研究が1回や2回では、加点は1点も付きません。回数に応じて少しずつ点数が増えるしくみではないので、注意してください。
行政書士研究に参加した回数が多い方でも、資金の出どころが大学や民間だと、条件に合うものは意外と少ないことがあります。申請の前に、1件ずつ資金を出した機関を確認しておきましょう。
加点を受けるために必要な資料
高度専門職ビザの申請では、ポイント計算表に書いた点数を裏付ける資料を出します。出入国在留管理庁のポイント計算表の各項目に関する疎明資料(基本例)では、グラントを受けた研究の実績について、次の資料が挙げられています。
- 外国政府から補助金などを受けた研究に3回以上たずさわったことを証する文書(例: 申請する方の名前が書かれた交付決定書の写し)
交付決定書は、補助金や研究費を出すことが決まったときに、資金を出す機関から発行される書類です。3回分の研究それぞれについて、政府の機関から出されたものであることと、ご本人の名前が確認できるものを用意しておくと、確認がスムーズになります。外国語の書類には、日本語の訳文を付けます。
上記の書類は、在留資格認定証明書交付申請のときに提出する書類の一例です。申請の種類や申請人の方の状況によって、必要な書類は全く異なります。全てをそろえて提出したとしても、入管から追加の資料を求められ、別途資料の提出が必要になることがあります。
なお、出入国在留管理庁の高度専門職のページでは、ポイントの合計が70点以上あることを確認できる資料を出せば足り、当てはまる項目すべての資料を出す必要はないとされています。学歴・職歴・年収など、ほかの項目だけで70点に届く方は、グラントの資料を出さずに申請することもできます。
「グラントを受けた研究」の加点を使うときの注意点
資金を出した機関が「政府」にあたるか迷うときは慎重に
国によっては、政府が設けた研究資金の配分機関や、政府とかかわりの深い財団が研究費を出していることがあります。こうした機関からの資金が「外国政府からの給付」にあたるかどうかは、機関のしくみによって判断が分かれます。
判断に迷うときは、資金を出した機関がどのような組織なのかを説明できる資料(機関の公式サイトの説明など)も準備しておくと安心です。
条件に合わない研究実績は「その他の研究実績」として申し出る
外国政府以外から資金を受けた研究や、回数が3回に届かない研究実績は、この項目では数えられません。その場合は、研究実績の4つ目の「同じくらいの研究実績があると申し出るもの」として、個別に判断してもらう方法があります。
この申し出は、関係する行政機関の意見を聞いたうえで法務大臣が判断します。そのため、高度人材ポイント制のQ&Aでは、この申し出にもとづく申請は、高度人材の優先処理の対象外になるとされています。審査に時間がかかる場合もあるので、余裕をもって準備を進めましょう。
70点ぎりぎりの方は特に慎重に
高度専門職ビザは、合計70点以上で対象になります。1号イで申請する方にとって、グラントを受けた研究の実績の20点(ほかの研究実績と合わせて25点)は大きな点数です。
ただし、資金を出した機関や、ご本人がたずさわったことの確認があいまいなまま申請すると、加点が認められないことがあります。この加点を含めてようやく70点に届く方は、加点が認められなければ基準を下回り、不許可になるおそれがあります。申請の前に、資料を1件ずつ確かめることが大切です。
学歴・職歴・年収など、ほかの項目の数え方は高度人材ポイント計算表の項目を解説した記事で、高度専門職ビザ全体のしくみは高度専門職ビザの解説記事でご確認いただけます。



資金を出した機関が政府にあたるかどうかや、代表者でない研究への参加をどう示すかは、判断が分かれることがあります。ご自身で数えた結果に少しでも不安があれば、申請の前にご相談ください。
大学・研究機関・企業の採用担当者の方へ
研究者を受け入れる大学や研究機関、研究部門のある企業では、研究実績が高度専門職ビザの基準に届くかどうかの決め手になることがあります。採用が決まった段階で、次の点をご本人と一緒に確認しておくと安心です。
- 申請する活動が1号イ・1号ロのどちらにあたるか(1号ハは対象外)
- 来日前にたずさわった研究のうち、外国政府から資金を受けたものが3回以上あるか
- ご本人の名前が書かれた交付決定書の写しなど、たずさわったことがわかる資料が手元にあるか
- 特許や論文など、ほかの研究実績もあるか
海外にある資料は、取り寄せに時間がかかることがあります。早めにご本人へ準備をお願いしておくと、申請までの流れがスムーズになります。
高度専門職ビザを持つ方は、在留期間が5年になる、永住許可の要件がゆるやかになるなどの優遇を受けられます。高度人材の永住申請については、こちらの記事でまとめています。
まとめ
「入国前に公的機関からグラントを受けた研究」は、高度人材ポイント計算表の研究実績の1つで、研究者の方にとって大きな加点になる項目です。
- 加算されるのは1号イで20点(ほかの研究実績と2つ以上で25点)、1号ロで15点。1号ハは対象外
- 外国政府から補助金・競争的資金などを受けた研究が対象。大学や民間からの研究費は数えられない
- 申請する方がその研究にたずさわっていたことが必要
- 条件に合う研究が3回以上必要で、1〜2回では加点なし
- ご本人の名前が書かれた交付決定書の写しなどで示し、ほかの項目で70点に届けば出さなくてもよい



ポイント計算や資料の準備に不安がある方や、申請の手間を減らしたい方は、ぜひ一度東京セントラル行政書士事務所にご相談ください。
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よくあるQ&A
- 「グラント」とは何ですか?
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研究のために交付される補助金や研究費のことです。高度人材ポイントでは、外国政府から補助金・競争的資金などを受けた研究が対象になります。
- 母国以外の国の政府から受けた研究費も数えられますか?
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省令では「外国政府」と定められており、母国の政府に限られていません。留学していた国の政府から資金を受けた研究なども、条件に合えば対象になり得ます。
- 大学や民間の財団から研究費を受けた研究は対象になりますか?
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この項目の対象は外国政府からの給付なので、大学の学内予算や民間からの研究費は数えられません。同じくらいの研究実績があるとして申し出て、個別に判断してもらう方法はあります(この場合は優先処理の対象外です)。
- 条件に合う研究が2回しかありません。何点になりますか?
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3回に届かない場合、この項目による加点はありません。特許や論文など、ほかの研究実績に当てはまるものがないか確認してみてください。
- 経営・管理の活動(1号ハ)で申請します。グラントの実績は使えますか?
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いいえ。1号ハのポイント計算表には研究実績の項目がないため、グラントを受けた研究の実績による加点はありません。

