「勤め先が中小企業なら、高度人材のポイントが加算されると聞いたけれど本当?」
高度人材ポイント計算表を見ながら、こうした疑問を持たれる方がいらっしゃいます。
計算表には「中小企業」という言葉が出てきますが、どの会社が中小企業にあたるのか、どんなときに加点されるのかは、表だけを見てもわかりにくいところです。
この記事では、高度人材ポイントでいう中小企業の定義と、中小企業で働く方が加点を受けられる条件を解説します。
※正確には在留資格「高度専門職1号」ですが、この記事では、一般的に伝わりやすい「高度専門職ビザ」という表記を使っています。

東京セントラル行政書士事務所
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高度人材ポイントの「中小企業」は中小企業基本法の定義で判断する
高度人材ポイント計算表でいう「中小企業」は、入管が独自に決めているものではありません。中小企業基本法の第2条第1項に定められた「中小企業者」を指します。
このことは、出入国在留管理庁の高度人材ポイント制のQ&A Q13でも説明されています。業種ごとの基準は次のとおりです。
| 業種 | 資本金の額または出資の総額 | 常時使用する従業員の数 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業・その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
資本金か従業員数のどちらかを満たせば中小企業にあたる

表を見るときに大切なのは、資本金と従業員数の両方を満たす必要はないという点です。法律の条文では「資本金の額又は出資の総額が〇〇以下の会社」と「常時使用する従業員の数が〇〇以下の会社及び個人」が並べて書かれており、どちらか一方に当てはまれば中小企業者になります。
たとえばサービス業の会社で、資本金が1億円あっても、従業員が80人であれば中小企業にあたります。反対に、従業員が150人いても資本金が3,000万円であれば、こちらも中小企業です。
また、従業員数の基準は「会社及び個人」となっているため、法人だけでなく個人事業主も対象に含まれます。
業種は会社の「主たる事業」で判断する
どの業種の基準を使うかは、その会社が主たる事業として何を営んでいるかで決まります。小売業と卸売業の両方を行っている会社や、ITサービスと製品販売を組み合わせている会社などは、どの業種にあたるかで基準の金額・人数が大きく変わります。
行政書士 谷田複数の事業を行っている会社は、どの業種として判断するかで結論が変わることがあります。決算書や事業内容を見ながら判断する必要があるので、迷ったときは申請の前にご相談ください。
中小企業で働くだけでは高度人材ポイントは加点されない


高度人材ポイント計算表の右下には「(注3)就労する機関が中小企業である場合には、別途10点の加点」という注釈があります。この一文だけを読んで、勤め先が中小企業なら10点もらえると考えてしまう方がいらっしゃいますが、それは誤解です。
注3は、ボーナス項目の「イノベーションを促進するための支援措置を受けている機関における就労」に付いている注釈です。つまり、国の支援措置を受けている会社が、さらに中小企業でもある場合に、上乗せで10点が加わるという意味になります。
中小企業に関係する加点項目を整理すると、次のようになります(出入国在留管理庁のポイント計算表より)。
| 勤め先の状況 | 加点 |
|---|---|
| イノベーション促進支援措置を受けている会社(大企業を含む) | 10点 |
| イノベーション促進支援措置を受けている会社で、かつ中小企業 | 20点(10点+別途10点) |
| 試験研究費等比率が3%を超える中小企業 | 5点 |
| 中小企業であるだけ(上のどれにも当てはまらない) | 加点なし |
中小企業の方が多く加点されるのは、一般的に大企業より給与水準が低く、年収のポイントを取りにくいという事情を踏まえたものです。そのうえで、加点の対象は「新しい技術や事業に取り組んでいる」と国が認めた中小企業に絞られています。
国のイノベーション支援措置を受けている中小企業なら合計20点
「イノベーションを促進するための支援措置」とは、法務大臣が告示で定めた、国の法律にもとづく認定・承認や、各省庁の補助金などのことです。対象になる制度は、出入国在留管理庁が公開している特別加算の告示(イノベーション促進支援措置一覧)の別表第一・別表第二に並んでいます。
中小企業になじみのあるものとしては、たとえば次のような制度が一覧に含まれています。
- 中小企業等経営強化法にもとづく「経営革新計画」の承認
- 地域経済牽引事業の促進に関する法律にもとづく承認
- 産業競争力強化法にもとづく一部の認定
- 各省庁の研究開発系の補助金(中小企業イノベーション創出推進事業など)
この一覧は、法律の改正や補助金の終了などにあわせて毎年改正されます。以前は対象だった制度が外れていることもあるため、申請の時点で最新の一覧に載っているかを必ず確認してください。



社長さんや経理の方が「経営革新計画の承認を受けている」ことを、外国人社員の方がご存じないケースもあります。会社が受けている認定や補助金を一度洗い出してみると、思わぬ加点が見つかることがあります。
研究開発費の割合が3%を超える中小企業なら5点


国の支援措置を受けていなくても、研究開発に力を入れている中小企業であれば、5点の加点を受けられる場合があります。
条件は、試験研究費と開発費の合計が、売上高(個人事業の場合は事業所得にかかる総収入金額)の3%を超えていることです。どの期間の数字で比べるかは、会社か個人事業主かで違います(高度人材ポイント制Q&A Q14・ポイント計算表の各項目に関する疎明資料(基本例)より)。
- 会社の場合:申請日の前の事業年度の数字。申請日が前の事業年度が終わってから2か月以内の場合は、その1つ前の事業年度の数字
- 個人事業主の場合:申請日の前の年(1月〜12月)の数字。申請日が1月〜3月の場合は、その1つ前の年の数字
個人事業主の方は、会社の「事業年度」ではなく暦年で数える点に注意してください。
この加点を使うときは、試験研究費等と売上高等が書かれた財務諸表の写し、確定申告書の控えや帳簿の写し(試験研究費にあたる箇所に印をつけたもの)と試験研究費等の内訳の一覧表、税理士・公認会計士・中小企業診断士による証明書(書式自由)のいずれかで、3%を超えていることを示します(ポイント計算表の各項目に関する疎明資料(基本例)より)。
試験研究費や開発費にどの経費を含められるかは、決算書の科目名だけでは判断できないことがあります。計算のしかたは、次の記事でくわしく解説しています。


中小企業の加点を高度専門職ビザの申請に使うときの確認ポイント
高度専門職ビザの申請では、ポイント計算表に書いた点数の一つひとつについて、それを裏付ける資料を出す必要があります。中小企業に関する加点を使う場合に、特に気をつけたい点をまとめました。
会社の資本金・従業員数がわかる資料をそろえる


中小企業にあたることは、会社の主たる事業と、資本金か従業員数から示します。ポイント計算表の各項目に関する疎明資料(基本例)では、次の資料が例として挙げられています。
- 主たる事業がわかる資料:会社のパンフレットなど
- 資本金の額・出資の総額がわかる資料:登記事項証明書、決算文書の写し、定款の写しのいずれか
- 従業員数がわかる資料:雇用保険・労働保険の資料や賃金台帳の写しなど
主たる事業の資料は、どの業種の基準を使うかを示すために必要です。資本金と従業員数は、表の基準を満たしている方の資料があれば足ります。従業員数を数えるときは「常時使用する従業員」が対象になるため、役員や短期のアルバイトをどう数えるかで迷うこともあります。
認定・承認や補助金の通知書を確認する
イノベーション促進支援措置で加点を受ける場合は、会社が受けた認定・承認の通知書や、補助金の交付決定の通知書などで、支援を受けていることを示します。通知書が見つからない、認定の期間がいつまでかわからない、といった場合は、会社の担当部署に早めに確認しておくと安心です。
加点は「働く会社」についての話であることに注意する
中小企業の加点は、外国人ご本人が契約を結んで働く会社(経営者の方は経営する会社)について判断します。グループ会社や取引先が支援措置を受けていても、ご本人の勤め先が受けていなければ加点にはなりません。
70点ぎりぎりの方は特に慎重に計算する
高度専門職ビザは、合計70点以上で対象になります。中小企業の加点を含めてようやく70点に届く方は、その加点が認められなかった場合に基準を下回ってしまいます。中小企業にあたるか、支援措置が最新の一覧に載っているかを、申請前にしっかり確かめることが大切です。
学歴・職歴・年収など、中小企業以外の項目の数え方は高度人材ポイント計算表の項目を解説した記事で、高度専門職ビザ全体のしくみは高度専門職ビザの解説記事でご確認いただけます。



ポイントの計算は、一つの項目の数え方を間違えるだけで合否の見通しが変わってしまいます。ご自身で計算した結果に少しでも不安があれば、申請の前に一緒に確認しましょう。
技術・人文知識・国際業務から高度専門職への変更については、こちらの記事で違いや注意点をまとめています。
まとめ
高度人材ポイント計算表の「中小企業」は、中小企業基本法の定義で判断します。ただし、中小企業で働いているだけでは加点されません。
- 中小企業かどうかは、業種ごとの資本金か従業員数のどちらかが基準以下かで判断する
- 国のイノベーション促進支援措置を受けている中小企業で働く場合は、合計20点が加点される
- 試験研究費等の割合が3%を超える中小企業で働く場合は、5点が加点される
- 支援措置の一覧は改正されるため、申請時点の最新の一覧で確認する
- 会社の資料が必要になるため、採用担当者の方の協力が欠かせない



ポイント計算や資料の準備に不安がある方や、申請の手間を減らしたい方は、ぜひ一度東京セントラル行政書士事務所にご相談ください。
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よくある質問
- 勤め先が中小企業なら、それだけで10点もらえますか?
-
いいえ。中小企業であることだけでは加点されません。国のイノベーション促進支援措置を受けている場合か、試験研究費等の割合が3%を超えている場合に加点されます。
- 資本金は基準を超えていますが、従業員は少ないです。中小企業にあたりますか?
-
従業員数が業種ごとの基準以下であれば、資本金が基準を超えていても中小企業にあたります。資本金と従業員数は、どちらか一方を満たせば足ります。
- 大企業で働いている場合、イノベーションの加点は受けられませんか?
-
勤め先がイノベーション促進支援措置を受けていれば、大企業でも10点が加点されます。中小企業の場合は、そこに別途10点が上乗せされます。
- 会社が支援措置の対象かどうか、どこで確認できますか?
-
出入国在留管理庁のホームページにある「イノベーション促進支援措置一覧」(特別加算の告示)で確認できます。一覧は改正されるため、申請の時点の最新版を見てください。
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